トランプの就任演説は、選挙中やその勝利後から今まで彼自身が言ってきたことをまとめて話したもので、それほど違和感なく聞き受けられた。失業の増加や格差・不平等の拡大など、これは今あるアメリカの問題そのものだ。まずはこの自国内の問題を優先して解決しようというAmerica First。日本語訳を「アメリカ第一主義」とすると誤解してしまうが、これまで世界の覇権国として海外各国に影響力を及ぼしてきた外交政策をやめて、アメリカ内を重視するというものなのだ。
自国がボロボロだからこちらの修復に専念する、何ら批判するものではない。これまでアメリカは世界のリーダーを標榜するものの、実は様々な国に軍事介入しさんざん荒らしてきたのだ。それをトランプは阻止、軍需産業の温床に切り込んだ。America Firstのおかげで、日本はアメリカが引き起こすだろうはずだった中東などの紛争地域への派兵を強いられずにすんだのだ。このことをわかっていない日本人が多いが、本当は大変重要なことだ。私はクリントンが大統領にならなくてよかった、と今も思っている。
既存の米主要メディアは支配層で占められているので、アンチトランプへの攻撃的な報道ばかりだ。とにかく叩くだけでなくもう少し世界観をもってほしいが、今のメディアがどうもおかしいということに皆さんも気づいた方がいい。日本のメディアはそれに追従なのでまた妙だ。
シンガポール在住の投資家ジム・ロジャースは、ずっとアメリカの財政危機について警告を発している。その彼がここ数日「見るもの聞くものすべて懐疑的であれ。あらゆる国や様々な情報源をあたり、自分で判断しなさい。」といっている。今の報道が相当おかしいということだ。そして「トランプが通商戦争を始めたら、世界経済が大混乱に陥る。」
といって私はトランプ全面支持ということではない。トランプの「保護(主義)」は経済至上の金融資本主義がベースだ。どんな方法でもいいから産業を作り出して経済を潤わせることが本当に功を奏するのか。気候変動問題など全く不問に付しており、地球の危機に眼を向けていない。持続不可能なキャピタリズム自体を変革してSustainable Developmentを進めるべきだが・・・。
この人はともかく「壊す」つもりなのだろう。
私たちはかなり痛みを伴うことに備えなければいけない。そして重要なのは、その後にどんな社会をつくるかだ。