海外のメディアが日本の政治や社会の右傾化に関心を払っている。
今回の森友学園を巡る問題が発覚する以前からなのだが、これがきっかけで在京の海外ジャーナリストの視点がよく報道されるようになった。
ニューヨーク・タイムズのジョナサン・ソーブル氏は、毎日新聞のインタビューに対して以下のようにこたえている。
「森友学園の問題は、日本の政治や社会の右傾化を象徴する一つの例だと見ている。憲法改正への意欲を示す安倍晋三氏の首相就任以来、日本の右傾化の動きに米国では関心が集まっており、森友問題もこの一環として捉えられている。
・・・米国には日本の右傾化を懸念する声もあれば、トランプ大統領のように軍備拡張を求め防衛面での自立を促す人もいる。森友問題は双方にとって関心が高く、今後も注視したい。」(2017年4月3日掲載)
中立の立場を貫いているが、重大な動きであることを指摘している。
そんななか、今度はThe Economistに関連の解説記事が掲載された。
「日本の超国粋主義者たちの天皇陛下に対する報われない信仰心−愛国主義的過激派たちの問題」(2017年4月15日掲載)
森友問題のいきさつを踏まえ、昨今の右翼や超国粋主義者たちが派手に街を闊歩し政治に食い込んでいる様を伝えている。彼らが注目しているのは、現政権の歴史修正主義(第二次大戦中の虐殺や従軍慰安婦問題はなかったとの主張)が天皇陛下には相反するものであるという、このきしみ状況だ。
言い換えれば、天皇が意図していないことを政府が思うように進めようとしている、といったもの。記事の挿絵がその脈絡を示している。
タイトルはやわらかい表現になっているが、本文に多くみられる辛辣な表現(例えば、現職の2大臣を「狂気じみた修正主義者(rabid revisionists)」というなどかなりキツイ)を読んでいくと、筆者は今の日本政府に否定的だと伝わってくる。
日本の主要メディアには名前さえ出てこない日本会議についても取り上げ、「38,000人の会員をもち安倍内閣の3/4を占めている」ことをはっきり書いている。他の海外メディアでもごく当然に頻出しているので、海外読者の方が普通に認識しているのではないだろうか。
単に政府と天皇の意見があわない、といったことではなく、日本政府の右傾化に懸念をもっている表れだろう。同誌は世界のインテリ層に影響力のあるハイレベルな経済誌だ。海外から日本がおかしな方向にいっていると見られている、このことを知っておいた方がいい。