若いころ、「あなたの尊敬する人は誰ですか?」と聞かれると、マーガレット・サッチャーと答えていました。
「この国のダメなところを変えるのだ」という意志がビシビシ伝わってきて、それを断固として貫く強い姿勢が素晴らしかった。それを女性がやるのだから、また刺激された。
Financial Timesには長~い追悼記事が掲載されています。
サッチャー氏を悼むイギリス人は一様に「イギリスを変えた(Change)偉大なるリーダー」と讃えている。あの時代のイギリス、落ちぶれていた国に希望と誇りをもたらしたのだから、この賛辞には心から同意します。オバマ大統領の“Change”が霞むのも無理ないな。
しかし、彼女のやったことを一つひとつみていくと、その時代だからよかった・・というものも多く、そのまま今同じことをすればいいのではありません。
金融市場緩和策のBig Bangは、金融資本主義の始まりだった。金融業を主軸にする産業構造はマネーゲームを拡大し、他産業は空洞化。私は金融界の人間でないのであまりその分野の友人はいないけれど、イギリスの友達が話す「有能な人材」はシティで活躍するバンカーばかりだったな。金融を活用して社会をよくしよう、というSRIが発案されたのもイギリスだ。
それが歯止めなく広がった結果、金融システムが崩壊。リーマンショック後は、サッチャリズムを批判し失敗を指摘するエコノミストの論説がたくさん出てきた。今となっては批判されるべき政策を進めたわけだけれど、その当時は停滞しきって英国病といわれた国に新たな産業をつくって国力が復活したのだから、それはそれで魔法だったわけだ。
またフォークランド侵攻もサッチャー氏の栄光を象徴する事件。
本国から遠く離れた取るに足らないような小さな島にイギリス軍が押し寄せることがこんなに評価されるなど、日本人にはちょっとわからなかった。イギリスという旧帝国、旧覇権国だから許されるのか・・。今の時代に日本が尖閣諸島を武力で占拠したとしたら、評価されるどころか非道な行いに批難ごうごうだろうが・・。
サッチャー氏が生きてきた80~90年代は、冷戦が解かれて世界が次のモデルに動く時代でした。今の時代をどんな社会にReformしていくのか、私たちは21世紀のChangeを自分たちの強い意志で進めなければならないですね。
ご冥福をお祈りします。