創ゾウ人~世界を視る、地球で感じる~

戦略的CSRとCSV

2013年07月5日

マイケル・ポーターがCSV(共通価値の創造)を言い出したことで、価値創造につなげるCSRの考え方が広がっているようです。私も以前からこの方向を主張しているのでそれは歓迎なのですが、CSVばかり着目する傾向が一方にあり、これには忠告しないといけないです。

彼はCSVを論じる前に、最初は戦略的CSRを提示していました(2006年12月)。これがよくまとまっているので、私もこれまで認識あった基本的CSRに対応してこの価値創造タイプを戦略的CSRとして説明してきました。

しかし、2011年にはCSRを全面否定して、それに変わる戦略としてCSVを提唱したのです。

その転身は、アメリカならではの事情でしょう。アメリカでは、CSRは浸透していない。企業の社会活動とは企業市民活動(=社会貢献)や世間からの評判構築でしかない、と見られているのです。だからいくらポーターが「CSRに戦略的に取り組もう」といっても、”CSR”と呼ぶ限り経営に結びつけて扱ってくれなかったのでしょう。プライド高いポーターがそれで簡単に引き下がるわけでなく、そこで新たな用語を持ち出してCSR否定をしたに違いありません。

日本人はアメリカ信仰でポーター様々ですから、日米の経営姿勢の違いを考えずにそのまま礼賛する方が多い。このコンセプトに乗っかろう、と。経営コンサルティング業界にいた私にはそれがよくわかります。

そもそも日本の経営は、利益追求でなく社会に向いた企業姿勢なのです。CSRを創業時から理念におき経営の根幹としている会社を、何で否定するのでしょう。アメリカを手本とする時代なんぞとうに終わっていて、あちらが日本のような経営をし始めたということじゃないですか。

私もCSVを話題に持ち込みますが、それは戦略的CSRを事業に組み込む説明をする場合です。CSRはもっと包括的なもので、CSVはそのひとつとして位置づけるもの。

一例をあげましょうか。

CSVの例に、「調達方法を変えることで品質と収穫量を向上させる」とあります。ではこれによって、環境問題がひどくなったらどうなんでしょうか。

CSRはリスクと機会の両面でとらえ、それぞれで適切な取り組みをすることです。

くれぐれも誤解と誤用のないように・・・。

 

海野みづえ プロフィール

2020年4月より山梨県北杜市に在住。
それまでは企業向けのサステナビリティ経営アドバイザリーを展開。23年間経済と社会の接点の分野をビジネスの立場から取り組んできた。
この間自身の価値観を根本から転換していく意識が湧き上がり、生き方を変革(Transform)することが、サステナビリティの基本と感じる。

現在は自然と接する中で人間らしいライフスタイルを実践し、社会全体をホリスティックにとらえる眼をつちかっている。

創コンサルティング
https://www.sotech.co.jp/

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