社外取締役として関わっているブラザー工業が創業100周年を迎え、先日その記念式典が催されました。
ブラザーは外国製ミシンの修理からはじめ、国産ミシンの製造で創業した会社です。安井兄弟が協力して創業したことから、ミシンのブランドを「ブラザー」と名づけ現在の社名に引き継いでいます。輸入産業を輸出産業にしよう、を合言葉に日本の技術者が製品として形にしてきました。今では売上げの8割を世界市場が占めています。
このような100年の歴史は、多くのOBの方々一人一人の努力の積み上げつないできた成果です。私なぞ、最後の1年でたたっとこの会社の仲間になり共有させていただいているだけですが、今回この会社の歴史を知る良い機会になりました。
当時の外国製ミシンは高価なものの壊れやすく、買ったはいいが修理や交換部品の調達など大変でした。手先の器用な安井氏が修理から始め、自分たちでミシンをつくろうという意識を強めていきました。国産化に成功したブラザーのミシンは大変頑丈で、壊れにくいことが評判だったとのこと。第1号ミシンは麦藁帽子製造用のもので、今でも使われているそうです。
ミシンだけでなく、その後電子レンジや扇風機など様々な家電製品もつくっていたことを、今回初めて知りました。手を広げすぎと思うものの、技術を核としてあらゆるチャレンジをしていた表れです。タイプライターもミシン技術の応用なのだそうです。
海外展開については、ロサンゼルスオリンピックでタイプライターの公式スポンサーとなったことがアメリカ市場開拓の土台となっています。タイプライターですから、日本よりも英語圏での販売に適したのです。電動タイプライターからファクスを経て90年代後半からプリンティング事業に力を入れ、ここ数年拡大しています。
式典のあとには記念コンサートがあり、「タイプライター」という曲が演奏されました。そんな曲があったなんて。「タッタッタッ」というタイプライターを叩く音、行の終わり近くなると鳴る「チン」という音、そして手動のレバーで改行するときの「ギイッ」をリズミカルに編曲した音楽でした。今のPCキーボードは腕にやさしくカチャカチャっとしか音が出ませんけれど、ダイプライターは一つの音空間ですね。あまりに騒然としすぎて音を楽しむという余裕すらなくなってしまった最近のオフィスでは考えられない音楽だな、と思いを巡らしながら聞いておりました。