海外に行くと、Independentな立場の人たちと多く出会います。彼らは皆、コンサルタントという肩書きで自分や仲間で事務所をもって、クライアントとの個別のプロジェクトを展開しています。組織に属している場合でも、社員ではなく専門ごとのプロジェクト契約で関わるプロフェッショナルをよくみかけます。
「独立」×「専門家」=「価値あるプロフェッショナル」
というのが一般認識なのです。
私がそういう働き方を知ったのは、最初の会社勤めを始めた時。そこでは海外の研究所向けに日本の市場・企業調査を提供していました。そのクライアントの一人はスイスの研究所の研究員で、ロンドンで支社を立ち上げた後、自分の事務所をつくって独立したのです。イギリス人の彼は、今でも自宅の一角でこのスタイルのビジネスを続けています。20年来のよき友です。
研究機関やコンサルティング会社でスキルを磨きクライアントを開拓し、その経験をもとに個人ベースで企業と契約する。規模は小さいけれど、活動の範囲は広く影響力は大きい。自分の専門性を切り口に、大企業にアドバイスしていくのです。「こんな働き方があるのか」、20代の私には新鮮でした。次第に自分の人生のモデルとなり、私もいつかそんな道を歩めたらなぁ・・・と思うように。しかし、海外でそんな人はよく見かけるのに日本でそのモデルとなる人は私の回りに皆無でした。大企業や役所の主要ポストを勤めたお偉い人がその基盤で続けるというパターンは見ますが、これは私が見た欧米の独立プロフェッショナルとはちょっと違う。
そんな思いをずっと持ち続けてコンサルティング会社で働くうちに、私もやってみようと独立を決意したのが12年前でした。その時はクライアントの目処などほとんどないのに、「このまま続けていても5年後の自分が見えない。その先プロでいるために、今始めなければ」と漠然と感じて始めたのでした。
私が今でも続けていられるのは、海外で出会う独立のプロフェッショナルたちがとても充実して仕事をしていることが刺激になっています。組織にいるよりも、自分の納得いく仕事ができるのです。プロ意識も高まる。このような人たちは、組織や名声で判断するのではなく、その人がどれだけ見識や経験、ネットワークをもって「意味ある人間か」を見るので、私とも同等に話してくれます。
カナダで仲間とコンサルティングをやっているデイビッドは、CSRの会議があるたびによく会います。日本が好きで、時々日本にも来てプロジェクトの可能性なんかを一緒に話したりします。イギリスのNGOアカウンタビリティ社にいたマリアは今、独立のコンサルタント。最近はドバイの不動産会社が大きなクライアントだそう。儲かるだろうな。チリのダンテは大学の職員ですが、企業に向けたプロジェクトをいろいろやっています。ISOの委員もやっていて、日本の知人も多い。以前弊社ではイギリスの独立のSRI調査機関EIRISのプロジェクトを日本で行いましたが、それもCSR会議の場でここのスティーブと会って話したことがきっかけでした。日本で独立の調査ができる機関を探していたのです。
日本では独立であることをあまり尊重してきませんでした。「組織に属していない」ということは、会社で生きていけない人間=失敗した人間という見方ではないでしょうか。所詮、個人のやっていること、としか受け止めない。「何を」言っているかではなく、「誰が」言っているかでしか判断しないのです。
これまで日本はこの理屈で発展してきましたが、これからはこればかりではやっていけない。「個」の尊重が必要で、上記の方程式を認める素地がだんだん広がっていると感じています。独立であるからこそ、専門の眼が研ぎ澄まされるのです。私が創コンサルティングをやり続けているのは、日本特有の既成概念を打破するため、それを自分が実践して示すためでもあります。独立で働きたいという人は、たくさんいます。思い切って独立する人がもっと増えてくれると私も嬉しいです。