アメリカ政府に金融支援を要請しているGM、フォード。再建計画で提示しているCEOの年俸は1ドル=たったのヒャクエン!です。ここまで譲歩するなら、議会にCEO用のジェット機使用をなじられる前に示せばよかったのに。経営トップ自らがまず再建の痛みを負うべき、という一般市民の常識的な考えがようやく経営者の頭に入ってきたようです。
アメリカ企業トップの法外な報酬額、これまでずっと指摘されてきたことです。会社の業績は経営トップだけの手腕ではないだろうに、数十億、数百億単位が一人のために支払われるのです。それだけ過酷な労務と過剰な責任ではありますが、社員あっての会社じゃないでしょうかね。トップに収入が集中しすぎることは、世界のグローバル格差を生んでいることにつながっています。
ですから、株主行動の内容をみてもガバナンスについての提案が活発で、役員報酬の開示と高すぎる金額への説明を求めるものが圧倒的に多いです。株主主権であるはずのアメリカ企業でも、トップが決めることに歯止めをかけるのは難しい。毎年役員報酬額が調査会社から公表され一般的な基準があるものだから、「平均が○○ドルだから、ワタシはそれより高額を要求して当然だな」ということで、金額は年々上がり続けていたのです。
報酬額だけではありません。敵対的買収という場面になれば、現在のCEOに去っていただくために巨額の退職金を用意する、ゴールデンパラシュートなどという防衛策もあります。買収をしにくくさせる目的の方策なのですが、当該のCEOは「退職金がもらえるなら買収されて辞めるのも仕方ないか」などと、最後は社員を考慮しない自分だけの利得がまかり通ってきます。
株主の力で抑えようにもうまくかわされ、握りつぶされてきた役員報酬の構造が、今回の金融危機で変わりつつあります。議会の公聴会では、議員の積年の不満が各所で表れていますからね。
金融機関の破綻は、あまりに短期で利益やリターンだけを重んじていた投資のあり方が間違っていたことのあらわれです。私の周りのSRI/ESG投資家は、短期指向の財務だけの業績評価にずっと異を唱えてきた人たちなので、一様に現在の状況を「それみたことか」と冷ややか。持続可能な社会に向けて長期投資をベースにした考えが重要、という論調が活況を帯びていると感じています。