質問をひとつ。
ここはアメリカ。父と子が車にはねられて、別々に救急車で病院に運ばれた。
重傷の子供が運びこまれた病院で、担当だった外科医が施術しようとその子供を見るなりいった。
「この子は私の息子なので、私は手術できない。」(肉親であると別の医師が担当する。)
さて、この医師と子供の関係は?
解答はいくつかあります。この質問に、向井万起男さんは「簡単だよ」といってこう答えたそうです。
はねられた父親は新しい父親で、外科医は離婚前の血のつながった父親だった。
そう、もっともですね。しかし万起男さん、次の解答を聞いて自分の答えを恥じたそうです。
「外科医はその子の母親だった。」
「外科医」と聞いた瞬間、そういう専門職は「オトコの仕事」と擦りこまれているんですね。万起男さんは宇宙飛行士で心臓外科医の向井千秋さんの夫で、千秋さんへの理解の深さでも有名な方です。そんなオレが、外科医が女性であることを考えもしなかった・・・というわけ。いや、実は私も同じような思考だったのデス。
これはダイバーシティ大賞のシンポジウムで基調講演をされたパク・スックチャさんのお話のひとつです。パクさんは韓国籍で、アジアやアメリカでの仕事や家庭の経験をもとに語るダイバーシティの必要性がとても実感湧くものでした。
「日本」の「オトコ」を中心とした単一集団でこれからの日本を何とかしていこう、なんて考えたってろくに突破口が見えない。減少する日本人口のなかで、消費拡大に大いに貢献してくれるのは、中国や韓国、シンガポールの観光客です。国内だから・・なんて日本人同士だけに閉じこもっていては、「ニッポン素晴らしい!」とわざわざ来てくれるお客さまを取り込めないですね。国内でもダイバーシティを進めない会社は、ショボくなりますよ。
これまでの慣習や成功体験は、かえって余分な先入観となって邪魔になることが多いのです。その延長でなく、「それは偏見じゃないか?」と疑ってかかるくらいに転換していかないと。そう考えれば、日本にはいいものがたくさんあるのです。