「パラサイト」と聞くと、社会人になっても親と同居して生活費を安くあげてすます若者を想像します。しかしここでのパラサイトは、現役時代はバリバリのビジネスマンで大企業の社長や役員まで上りつめた極めて優秀な元企業戦士。
富士通の社長を辞任した野副氏。メディアでかなり取り上げられているので、ことの顛末はだいたい知っていましたが、ともかく本人の話が聞けるということで行ってみました。
彼の話では、会社側から「反社会勢力」といわれるファンドと付き合いがあることを指摘され、辞任を促されたということです。野副氏が自分の立場に起こったことをとつとつと説明していることに対し、会社側はずっと「ノーコメント」でなにひとつ説明しようとしない。これはどうもおかしい。
このセミナーでは朝日新聞の山田厚史解説委員が、ご自身の取材にもとづいたコメントを話しており、これが一番おもしろかったです。私たちがもやっと思っていることを、率直にズバッと説明してくれる。
山田氏の話では、会社の記者会見では会社側の事実把握や認識については、まったく発表がなかったといっていいものだったそうです。「反社会勢力に関わっているという事実を3月ころ把握し、それほど重大なことを9月の取締役会当日の辞任を促す会議まで本人に何も忠告をしなかったそうですが、本当ですか?上場廃止のリスクまである重大な事実であれば、辞任を促す前にもっと早くから忠告するのが一般的でないですか?」と考えるのが妥当だろう。そういう質問をしても、YesともNoともいわず、黙っているのも同然という反応。公開会社として、そのような重大事について説明する責任があるはずなのに。
ともかく会社側はダンマリを決め込んでやり過ごし、世間が忘れ去ってくれるのを待つかのようです。会社の信頼がそんなことでなくなるわけないと思っているのでしょうか。
現行の取締役会というより相談役の秋草氏の院政勢力が、ウラで会社のガバナンスを阻害しているよう。こうした「会社組織人間」は役職を過ぎても会社にとどまって権力をもちたがり、つまりパラサイト化している。富士通だけが特別とは思えず、日本の企業全般にみられることでしょう。
やっかいなパラサイト。若者パラサイトであればまだ害が少なくて、カワイイで済む。「オレってパラサイトだからなぁ。」と自身も認め、ヨワヨワしい。一方「おじいちゃまパラサイト」は、自分がおかしいなどと思っていないところが問題なんですね。秋草氏は85歳。こんな年齢まで「オレの権威で・・」とやっていては、激変する世界の環境に経営が迅速に立ち向かっていけないし、後継者が育たないだろうに。ナントカならないでしょうか。