先日個人投資家向けの資産運用セミナーに参加した時のことです。
SRIや環境といったいつもの私のテーマではなくて、一般の投資セミナーだったので、数百人大勢集まっていました。顔ぶれも、年金受給者らしく高齢の男女がかなりいました。
私がこのような資産運用のためのセミナーに出るのは珍しいです。
というのは投資のためというよりも、金投資の第一人者、ワールドゴールドカウンシル(WGC)の豊島逸夫さんのお話を聞きたくて行ったのでした。WGCという中立の立場で金の知識を広めることがお仕事なので、どうやって儲けるかという目先の話でなく全体観を聞けるところが人気のようです。私も金投資のことではなく「金を通して世界を読む」、という彼の分析眼や情報選別力に関心あって、今回は直接お話しを聞きに行ったというワケ。
こんな方でも(だから?)、10年以上金融機関でトレーダーとして働いていた時代は「無味乾燥だった・・」と虚しさがよく伝わってきました。総ざらいしてみると、トレーダーでの成績は8勝7敗くらいだったとか。奥さんからは「あなたやっと勝ち越せるくらいなんて、その程度だったの・・・」なんて言われて、私だってその世界知らないから豊島さんでもそんなもんか、と思ったりしました。
しかし、勝ち越せるっていうのは大したウデなんだそうです。「2回続けて負けた後、3連勝しなくちゃいけないっていうプレッシャーを想像してみてくれ」といつもは和やかな彼がその時は真顔に。そ、そうかぁ〜。華々しく見えるけど、大勢は連敗記録の末退場していくという現実なのです。
後半の質疑応答は会場からいろいろな人の発言があって、いつもの企業向けのセミナーとは大分違った雰囲気でした。そんななか30代くらいのこの女性の発言は、この世代の方たちの心情そのもの。
「小さい頃はおいしいものも食べていたけれど、就職した時には不良債権の焼け野原。それ以来一度もいい目を見ていないです。日本に明るい将来ってあるんでしょうか?」
ただの質問じゃなくて、感情こもっていて「何とかしてくれ」という気持ちがひしひしと。
会場が一斉にいい回答を期待していてのですが、その答えは「日本に明るい題材なんてない。何かカタストロフィーとか起きないと、この国は変わらないですよ。」
う〜ん、タメイキ。これって日本だけじゃなくて先進国に共通ですが、誰に聞いても悲観的だ。
60歳からの老後に向けた資産運用よりも、若い人が将来に向けて希望が持てる社会になることが重要。これはもうお金をどれだけ増やすかじゃなくて、社会的に意味のある生き方をする、という価値観のシフトに重点置いた方がいいよなって改めて思いながら帰ってきたのでした。