創ゾウ人~世界を視る、地球で感じる~

国際機関の人事力学

2011年05月26日

IMF専務理事の後任をめぐって、先進国と新興国のぶつかりがここでも見られます。

金融分野の国際機関のトップは、IMFが欧州で世銀はアメリカから、とこれまで慣習があるのです。セクハラ事件でストロスカーン氏が辞任してしまった後も、当然これまでのルールに従おうという欧米勢です。

そこで今あがっている候補はフランス人女性です。
国際機関ではフランス人であることが必須とか。それに加えて、女性であることがまた有利なのです。今では管理職レベルどころか、トップレベルでのジェンダーバランスが注視される世界の流れです。女性トップの方がいいなんて、残念ながら日本ではまだ考えられない。もっともオトコであっても、責任感もリーダーシップもない人間が居続けられるのだから、それ以前の問題か。

女性であることは、アメリカ大統領の候補やドイツの首相では話題になったけれど、今では珍しくもないです。彼女たちが男性より劣っているかって、現在の実力をみれば、そんなこと何もないことは明白です。女性をトップにおいて、この体制を強化していこうと協力する姿勢がみえますね。日本では、有能な女性がいたとしても、協力するどころか足を引っ張り何かと文句をつけて引きずりおろす力学が働くだろうことがアリアリ。

ジェンダーは全く問題ないですが、先進国vs新興国の思惑が露骨になってます。

これだけ新興国が強くなって(先進国が衰退して)いるなか、トップがまだ欧米で占められていいのか、と新興国のリーダーたちが声をあげているのです。もちろん欧米勢力はこの既得権益を手放したくない。

IMFの地位を新興国に譲るのは、実質的にも心理的に許せないのです。そんなことをしたら、IMFにつぎ込んでいるお金を新興国の債務国のいいように使われてしまいますからね。心理的にも、マナーやガバナンスのないヒトたちの下に置かれたくない・・・。今回新興国出身者がトップになるとは思われませんが、いずれはそんな慣習も破られるでしょう。

それにしても、「欧米とその他諸国」の構図の狭間でいつもヘゲモニーにやられて苦い思いをしてきたのが日本です。先進国でありながら、一人前扱いしてもらえない・・。その点では、IMFの人事でもアジア勢とうまく手をつなぎ、対欧米の流れにつけばいいともいえます。

すると今度は、「これまで対米従属でうまくやってきたので、アジアで主導といっても・・・」となるのでしょう。これってホント、「世界のなかの日本」を見ようとしない眼の狭さではないですか。あぁ、どういう立場にするの、ニッポン。

海野みづえ プロフィール

2020年4月より山梨県北杜市に在住。
それまでは企業向けのサステナビリティ経営アドバイザリーを展開。23年間経済と社会の接点の分野をビジネスの立場から取り組んできた。
この間自身の価値観を根本から転換していく意識が湧き上がり、生き方を変革(Transform)することが、サステナビリティの基本と感じる。

現在は自然と接する中で人間らしいライフスタイルを実践し、社会全体をホリスティックにとらえる眼をつちかっている。

創コンサルティング
https://www.sotech.co.jp/

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