先日自宅の本棚を整理していたところ「地球の掟」が出てきたので、あらためて読んでみました。
この本は1992年、アル・ゴアが上院議員だった時に環境問題全般についての彼の認識と今後のビジョンを綴った本です。アメリカのリーダーとして、環境問題をどう地球規模で政治の主要課題として取り組むかを92年の時点で発表しているのです。グローバル、大局的な視点で400ページにわたってぎっしりと書かれており、今読んでも事実認識の大筋は変わらないものです。
この書の副題「文明と環境のバランスを求めて」に現れているように、書いていることは環境問題のことだけでなくむしろこの課題から発して現代の人間のあり方を問うています。人間が自然を破壊して産業社会をどんどん進めていき、あたかも自然界を征服したかのように振舞っていることに疑問を提起。彼の思想的主張がずしりと伝わってきます。経済と環境のバランスだけでなく、人類としての価値観のバランスについて語っているのです。分量だけでなく文章表現も随分凝ったものなので、さぁっと簡単には読めません。相当思考が深いことがわかります。
これほど理路整然としていても、かえって頭が良すぎて近寄りがたいというイメージがマイナスになり、これが大統領選挙での負けにつながってしまいました。今さらながらブッシュに負けたことは本当に残念で、ささやかな抵抗として私は2000年以来アメリカの石油会社のガソリンスタンドは使わないキャンペーンをしています。
ゴアが敗北後に始めたのが、庶民へのアピールです。「地球…」のように難しい本でなく、誰にでも読みやすく写真入りのカジュアルなスタイル、そしてテーマも気候変動に絞った「不都合な真実」。彼の方針転換が、この2冊を読み比べるとよくわかります。おまけに映画までつくったのですから。やはり一般の人々に浸透するには、シンプルなメッセージをビジュアルで示す方が効果絶大です。
今選挙に出ればきっと勝つだろうに、と思いますが、それをせずにひたすら自らで実践する道を進んでいますね。一人でも、また劇的な負け方をしてもくじけずに訴え続ける、そんな彼の姿から学ぶところは多いです。