大学院の非常勤講師を続けて10年くらいになります。
3年前から留学生向けに東大の講座を担当しており、今ではこの講師だけをやっています。一人ですべてをやるのは日本語でも大変なので4人で担当し、一人当たり3コマをやることに。それでも英語で100分x3回やるので結構プレッシャーですが、3年も経つとだんだん慣れてきて、英語の勉強にもなってます。
講座の名前は”Business and finance for sustainable development”として、私はSustainable and responsible businessを担当。普段は日本の企業人向けに行うところ、ここでは大学卒の院生なので、ビジネス経験がないことが前提で、それもまたいつもと勝手が違うところなのだ。
今年もそのシーズンになり、まず第1回目の授業をほどなく終了。ほっとして、最後に”Any questions?”と投げたところ、インドからの留学生が質問。
「企業はCSRとかいって地域に配慮しているというけれど、インドでの実情はひどくて企業は利益しか考えていない。先生を批判するわけじゃないが、こういう実態どうしたものか・・」とやりきれない思いをぶつけてくる。
そうだよな、こういう現地の人たちの声を知らずに企業の立場だけで話しても通らないか。CSRの仕事をしていても、現実問題の解決につながらないことが多くいつもそこを考えてしまうのですが、インドという国のことを想像するとますます・・。
ということで、せめて理論よりも実状を題材にしようと、翌週の講義ではパーム油をテーマに、グリーンピースがユニリーバに行ったキャンペーンを取り上げる。NGOの主張と企業がとった対応がウェブでうまく公表されているので、NGO vs 企業の模擬ダイアログをやりました。
皆企業の経験がないけれど、それぞれ割り振られた立場で考えてみるというもの。
さてダイアログをしてみると、企業の立場で話すのは韓国人、それを「政府が開発を許可したものだからいいのじゃないか」とサポートするメキシコ人留学生。「それじゃ解決にならない」という例のインド人はNGO側。
ふ~む、こんな反応するのか、とそれを聞いている私の方が面白かったです。身近なところでも、グローバルの状況を再現できるものです。